頻尿の漢方的概念
9月も終わりに近づき、日中はまだ汗ばみますが、朝晩は涼しくなってきました。
これからの季節冷えてきますと、頻尿のお悩みが増えてきます。
そこで、東洋医学的に「頻尿」について考えてみたいと思います。
「腎虚」による頻尿の漢方的概念
☆漢方でいう「腎虚(じんきょ)」とは
漢方では「腎」を、単に腎臓という臓器ではなく、
- 年齢とともに衰えていく生命力
- 水分代謝を調節する働き
- 尿をためる・排出する働き
- 下半身や腰の機能
- 加齢に伴う体力・精力の衰え
などをまとめた機能的な概念として捉えます。
そして年齢を重ねて「腎の力」が弱くなると、
尿をしっかり保持する力が弱くなる
→ 少し尿がたまっただけで尿意が出る
→ 特に夜間に何度もトイレに行く
という状態を「腎虚による頻尿」と説明します。
八味地黄丸の考え方
代表的なのが八味地黄丸です。
漢方的には、
「老化などによって弱った腎の働きを補い、下半身や水分代謝の機能を整える」
という発想です。
ですから、単純に「膀胱の尿を止める薬」という考え方ではありません。
特に、頻尿+夜間尿+腰・膝の衰え+冷え+疲れやすさなどが一緒にある場合に、「腎虚」という体質を考えます。
「すぐ効かないと思う」という点も重要です。
漢方では、症状を一時的に抑えるというより、その人の体質・状態(証)を見て、崩れているバランスを整えるという考え方をします。そのため、慢性的な加齢性の症状では、ある程度継続して経過を見ることがあります。
まず「腎虚」は一つではありません
漢方では、腎の衰え方によって大きく
① 腎陽虚(じんようきょ)
② 腎陰虚(じんいんきょ)
のように考えます。 頻尿、とくに高齢男性で多くイメージされるのは、腎陽虚のほうです。
腎陽虚の場合
「腎の温める力・活動する力が弱っている」という捉え方です。
典型的には、
- 夜中に何度も尿が出る
- 尿が近い
- 尿量は比較的多い
- 冷えやすい
- 腰や膝がだるい、力が入りにくい
- 疲れやすい
- 寒いと症状が悪化する
- 足腰が弱ってきた
などが組み合わさります。
このような場合に、漢方では「腎の陽気が衰えて、尿を保持する力も弱くなっている」と考えます。
その代表的な処方が八味地黄丸です。
腎陰虚の場合
こちらは少し違って、「身体を潤す・冷ます側の腎の力が不足している」 と考えます。
- 口や喉が渇きやすい
- 手足がほてる
- 寝汗をかく
- のぼせる
- 尿量が少ない
- 腰がだるい
- 耳鳴りなどがある といった傾向を伴うことがあります。
この場合は、八味地黄丸とは考え方が異なり、六味地黄丸(ろくみじおうがん)などを考えます。
重要なのは「頻尿=腎虚」ではないこと
ここが一番大切です。 例えば、「夜3回トイレに行く」という症状だけでは、漢方的にも腎虚とは断定できません。
水分を多く飲んでいる、利尿薬を服用している、心臓・腎臓の状態、過活動膀胱、睡眠の問題などでも夜間頻尿は起こります。
漢方の「腎虚」をイメージすると
若い頃
「膀胱に尿をためて、必要なときに出す力が十分」
↓ 加齢
腎の力が衰える(腎虚)
↓
尿を保持する力が弱くなる
↓
少ない尿でも尿意が起こる・夜中にも尿が出る
というのが、漢方的な説明です。
つまり、「膀胱だけの問題として見るのではなく、身体全体の加齢による機能低下の一部として頻尿を見る」のが漢方の特徴です。
八味地黄丸は、
「年齢とともに腎の力が落ちて、冷えや頻尿、夜間尿、腰・膝の衰えなどが出てきた」
というタイプ。
一方、牛車腎気丸は、
「腎虚に加えて、水分がうまくさばけず、足のむくみ・重だるさ・腰や膝の痛みなどもある」
というタイプ、と考えると分かりやすいです。
牛車腎気丸は、基本的には八味地黄丸をベースに、牛膝・車前子という生薬を加えた処方です。そのため、両者はかなり近い関係にあります。
65歳以上で考えるなら
例えば、
「夜2~3回トイレに起きる。昼も近い。冷えやすい。腰や膝が弱ってきた。でも、むくみはない」
→ 八味地黄丸の考え方に比較的近いです。
反対に、
「頻尿+夜間尿」に加えて、足がむくむ、重い、腰・膝が痛む、尿量が少ない
→ 牛車腎気丸の考え方に近くなります。
このように体の状態によって選ぶ漢方も違ってきます。
気になられる方はお気軽にご相談下さいませ。





